iOSアプリ「うちの不動産カルテ」を、ヒーローズ・リーグ2026に応募しました。

キャッチコピーは、物件情報ではなく、そこで暮らす環境を調べる。 です。

この記事では、前半で一般の方向けに「何が便利か」を、後半で技術者向けに公開データの統合とPLATEAUの活用を紹介します。作品ページと紹介動画へのリンクは記事の最後にあります。

応募概要

  • 応募先:ヒーローズ・リーグ2026
  • 作品名:うちの不動産カルテ
  • キャッチコピー:物件情報ではなく、そこで暮らす環境を調べる。
  • プラットフォーム:iOS(App Storeで公開中)

紹介動画

動画が表示されない場合は、YouTubeで見るからご覧ください。

なぜ作ったのか

住まいを探していると、物件そのものの情報はいくらでも手に入ります。間取り、広さ、築年数、価格。物件検索サイトはどれもよくできています。

でも、候補が絞れてきたときに本当に知りたくなるのは、その建物の外側のことでした。

最寄り駅までどのくらいか。周りに何があるか。ハザードマップではどうなっているか。近くでは過去にどんな取引があったか。最寄りの小中学校を確認したい。駅からの道に坂はあるか。

これらは全部、国や自治体、オープンデータとして公開されています。ただ、それぞれ別のサイトに散らばっているので、候補物件ごとに何枚もタブを開いて、住所を打ち直して調べることになります。候補が3件あれば、その作業も3回です。

そこで、住所をひとつ入れるだけで、それらをまとめて調べられるアプリを作りました。

どんなアプリか

物件を探すアプリではありません

うちの不動産カルテは、物件を検索するアプリではありません。気になる候補物件を見つけた後に、その場所を深く調べるためのアプリです。物件検索サイトで候補を見つけたら、その住所をこのアプリに入れて使います。

住所を起点に、公開データを横断する

住所を入力すると、その場所について次の情報をまとめて「カルテ」にします。

  • 駅:最寄り駅と距離
  • 周辺施設:近くにある施設
  • ハザード:各種ハザード情報。区域に入っていない場合は「該当区域外」と表示します
  • 過去の取引事例:過去の不動産取引の事例。過去の取引事例は、市区町村単位のデータを参考情報として表示します。
  • 最寄りの小中学校:近くにある小学校・中学校
  • 坂の目安:周辺の高低差から見た坂の目安

ハザード情報について、区域に該当しないことは、その場所に何も起きないことを意味するわけではありません。アプリでは「該当区域外」という事実だけを表示するようにしています。

比較とPDF出力

候補物件を並べて比較できます。カルテはPDFに書き出せるので、家族と共有したり、内見に持っていったりできます。

ここから技術の話

技術構成

役割使っているもの
言語・UISwift / SwiftUI
地図MapKit
3D表示SceneKit
中継サーバーCloudflare Workers
使っている公開データ主な用途
国土地理院地図・標高などの地理情報
OpenStreetMap / Overpass API駅・周辺施設
不動産情報ライブラリ過去の取引事例など
Project PLATEAU建物の3D形状

複数のAPIを並行して取得する

ひとつのカルテを作るのに、性質の違う複数のAPIへ問い合わせます。順番に問い合わせていると、一番遅いAPIの待ち時間が積み重なって、カルテが出るまでに時間がかかります。

そこで、互いに依存しない問い合わせは並行して取得しています。

APIキーを端末に置かない

一部の公開データはAPIキーを使って取得します。このキーをアプリに埋め込むと、アプリを解析すれば取り出せてしまいます。

そこで、APIキーはCloudflare Workers側に置き、アプリはWorkersを経由してデータを取得する構成にしました。端末にキーを持たせずに済みます。

欠損データを「0点」にしない

公開データは、すべての地点で揃っているわけではありません。地域によっては、ある項目のデータがそもそも存在しないことがあります。

ここで素朴に実装すると、データがない項目を0点として扱ってしまい、「データがない」ことが「評価が低い」ことにすり替わります。これでは、データ整備が進んでいない地域ほど不当に低く見えてしまいます。

そこで、欠損している項目は評価から外し、残った項目で重みを付け直して評価する仕組みにしました。「分からない」を「悪い」と混ぜないための設計です。

PLATEAUを「見るだけ」で終わらせない

この作品で一番見てほしいのが、Project PLATEAUの使い方です。

LOD1による簡易3D

PLATEAUは、国土交通省が進める3D都市モデルのプロジェクトです。このアプリでは、建物を高さのある箱として表したLOD1の建物形状を取得し、SceneKitでPLATEAU LOD1建物形状を利用した周辺の簡易3D表示を行っています。

ただ、3Dで表示するだけなら「きれいな地図」で終わってしまいます。建物の形と高さが分かるなら、それを分析に使えるはずだと考えました。

日照阻害リスクの参考評価

周辺建物の高さと対象地点からの距離をもとに遮蔽仰角を求め、太陽高度と比較して日照阻害リスクを参考評価しています。

遮蔽仰角は、ある方向で「空がどのくらいの角度まで建物に遮られているか」を表す値です。太陽高度は、日付と場所から計算できます。太陽が周辺の建物より低い位置にある時間帯は、周りの建物に日差しを遮られやすい可能性がある、という考え方です。

LOD1は建物を単純な箱として表したモデルで、樹木や細かな形状までは表していません。そのため、この評価は実際の日照を示すものではなく、あくまで参考値です。内見の前に「この時間帯の様子は現地で確かめておこう」と気づくための材料として使ってもらうことを想定しています。

開放感の参考評価

周辺建物の配置・高さなどから、周囲の開け具合を参考評価しています。周りを高い建物に囲まれているのか、比較的開けた場所なのかを、ひとつの目安として確認できます。実際の見え方は、現地でお確かめください。

ヒーローズ・リーグで見てほしいところ

  1. 複数の公開データを、ひとつの住環境カルテに統合していること 国土地理院、OpenStreetMap、不動産情報ライブラリ、PLATEAUと、出どころも形式も違うデータを、住所ひとつから並行して取得し、ひとつのカルテにまとめています。欠損データを0点にしない再重み付けもその一部です。
  2. PLATEAUを「3D表示するだけ」でなく、分析に使っていること 周辺建物の高さと対象地点からの距離をもとに遮蔽仰角を求め、太陽高度と比較して日照阻害リスクを参考評価しています。周辺建物の配置・高さなどから、周囲の開け具合も参考評価しています。
  3. 候補物件の比較と、内見前の判断材料につなげていること 調べた結果を候補ごとに比較し、PDFで持ち出せるようにしました。データを眺めて終わりではなく、住まい選びの次の一歩に使える形を目指しています。

作品ページ・紹介動画・ダウンロード

ProtoPediaでは、作品の詳細を確認できます。 ProtoPedia「うちの不動産カルテ」

YouTubeでは、紹介動画を見られます。 紹介動画を見る(YouTube)

App Storeから、iPhoneで利用できます。 App Storeで「うちの不動産カルテ」を見る

アプリの機能は「うちの不動産カルテ」アプリページに、開発の経緯は開発記事とリリース記事に、公共交通オープンデータチャレンジ2026への参加についてはこちらの記事にまとめています。YutarouLabsのほかのアプリはアプリ一覧からご覧いただけます。

※表示する情報は公開データをもとにした参考情報です。物件の価値や将来を示すものではありません。住まいを決める際は、現地の確認や専門家への相談とあわせてご活用ください。